乳癌の画像診断といえば、まずマンモグラフィーや超音波検査ですが、精密検査としては造影CT、造影MRI、さらに核医学検査(FDG-PET/CT や骨シンチグラフィー)などが行われます。特に造影MRIは乳癌の局所進展範囲判定のための強力な武器であり、外科手術前には必須の検査方法です。
乳癌のMRI検査はほとんどの場合、造影MRIとして行われます。この際に静注で用いられる造影剤が、ガドリニウム造影剤といわれるものです。重金属であるガドリニウム(Gd)はそのままでは人体に投与できませんが、これをキレート化することにより、速やかに尿中に排泄されるように工夫されています。
CTなどに用いられているヨード造影剤と比較して、ガドリニウム造影剤は安全性が高く、重篤な副作用はまれといって良いでしょう。またヨード造影剤にしばしば認められる腎機能への影響は通常投与量では事実上ないと考えられます。しかし、即時型副作用(概ね1時間以内に発生)が皆無であるわけではありませんので、注意は当然必要です。
即時型副作用は表1のように分類されます。その危険因子には、表2のようなものがあり、特に過去にガドリニウム造影剤に対する中等度以上の副作用が認められた場合には原則として再投与できません。副作用が発生した場合の処置は、一般的な薬物等によるアナフィラキシー様反応の処置に準じます1)。
| 軽度 | 悪心、軽度の嘔吐 |
| 蕁麻疹 | |
| 掻痒感 | |
| 中等度 | 重度の嘔吐 |
| 著明な蕁麻疹 | |
| 気管支痙攣 | |
| 顔面/喉頭浮腫 | |
| 血管迷走神経発作 | |
| 重度 | 低血圧性ショック |
| 呼吸停止 | |
| 心停止 | |
| 痙攣 |
| ・ガドリニウム造影剤による即時型反応の既往 |
| ・気管支喘息 |
| ・治療を要するアレルギー疾患 |
ガドリニウム造影剤の亜急性期あるいは慢性期の副作用として最近知られるようになった腎性全身性線維症(NSF)の発生を防止するために、腎不全患者、特に透析患者には原則として禁忌です。NSFはしばしば重篤な後遺症を残す、重金属中毒ともいうべき疾患ですが、治療法がなく、予防が唯一の対処方法です。従って、ガドリニウム造影剤投与前の腎機能チェックはすべての患者さんに必須です。原則として推算糸球体濾過量(eGFR)が30mL/min/1.73u以下の場合には投与できません。どうしても必要と判断される場合には、NSF発生報告の少ない安定性の高いガドリニウム造影剤を選択する必要があります1-2)。