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Q&A  No.18掲載(2007年2月刊行)
【診断・検査-11】

センチネルリンパ節生検の適応、手技、使用実態について教えてください。

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聖路加国際病院
ブレストセンター 乳腺外科副医長 津川浩一郎
ブレストセンター長 乳腺外科部長 中村清吾
 センチネルリンパ節(sentinel lymph node、以下SLN)は腫瘍から直接リンパ流を受けるリンパ節と定義され、領域リンパ節の中で最初に転移が起こるリンパ節と考えられます。これがいわゆる“SLN理論(コンセプト)”と呼ばれるもので、その臨床的意義は、リンパ節転移状況の把握による至適リンパ節郭清範囲の決定、および正確な病期分類による集学的治療の適応決定の2つに集約されます。
 臨床的に明らかな腋窩リンパ節転移をもたない乳癌症例に対してSLN生検(SLN biopsy、以下SLNB)を行い、SLNに転移がなければ腋窩リンパ節郭清を省略するというプロトコールがすでに多くの施設で採用されています(図1)。この方法が癌の治療法として妥当であるかについては現在も検討が続けられていますが、確実性や有用性に関しては合意されつつあるようです。その効果として、腋窩リンパ節温存による患側上肢浮腫の防止、機能温存が挙げられ、ひいては入院期間の短縮、外来手術の適応などの医療経済効果が期待されるところです。
図1 センチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節郭清の省略
図1
■SLNBの適応
 SLNBの適応となる症例は、臨床的にリンパ節転移を認めない、いわゆるN0の症例です。転移で硬くなってしまったリンパ節にはRI(ラジオアイソトープ)や色素が流入せず偽陰性となることが多いため、臨床的に明らかに転移陽性の場合は適応外になります。N0の判定方法には、触診、超音波検査、CT検査、PET検査などさまざまな方法があります。硬く腫大したリンパ節や、画像診断で脂肪を含まず腫大したリンパ節などが認められる場合には転移陽性を疑い、SLNBの前に細胞診などによる病理学的な確認が推奨されます。
 ASCOのガイドライン1)では、原発巣がT1あるいはT2の腫瘍をSLNBの良い適応とし、T3あるいはT4の腫瘍、炎症性乳癌、妊婦、腋窩手術の既往がある場合などは推奨していません。また、多中心性腫瘍、術前化学療法後の症例を適応とするかは、意見の分かれるところです。
■SLNBの同定手技
 現在のところ、SLNを同定する手技としては、色素法とRI法があり、その併用が広く行われています。色素法は、色素(表1)をトレーサーとして、腫瘍近傍、腫瘍直上または腫瘍周囲の皮下、あるいは腫瘍直上の皮内に打ち込み、肉眼的に色素に染まったリンパ管を、SLNとして摘出する方法です。RI法は、RI溶液(表2)をトレーサーとして同様に注入し、携帯型のガンマ線検出器(ガンマ・プローブ)を用いて、RIの集積したリンパ節をSLNとして摘出する方法です。色素法による同定には習熟期間が必要で、手技の簡便さからは色素法とRI法の併用法の方が優れていると考えられます。また、トレーサーの注入部位として、腫瘍の占居部位にかかわらず乳輪下に注入することで高率に腋窩にSLNが同定可能であるとの報告が多く出され、簡便な方法として頻用されています。
 現在、聖路加国際病院では、併用法を採用し、RIは99mTc-フチン酸を2mCi/1.5mLを腫瘍側の乳輪下に注入し2〜4時間後にRIリンフォシンチグラムを撮像、当日もしくは翌日にSLNBを行っています。色素は1%サルファンブルー(1〜2mL)を乳輪下に術直前に注入しています。
表1 色素の種類
色素 分子量 汎用濃度  一般的用途
 (1)イソサルファンブルー 566.7 1%  リンパ管染色
 (2)サルファンブルー 566.7 1%  リンパ管染色
 (3)インドシアニングリーン 775 0.5%  肝・循環機能検査薬
 (4)インジゴカルミン 466.4 0.4%  腎機能検査薬
 (5)メチレンブルー 319.9 0.08%  神経染色
 (6)微粒子活性炭 粒子径20nm    リンパ流解析、吸着剤

表2 日本国内で販売されているRIトレーサー
 99mTc-HSA(human serum albumin):(粒子径:2〜3nm)
  テクネ・アルブミンキット(第一ラジオアイソトープ)
RIアンギオカルジオグラムおよび心プールシンチグラムによる心疾患の診断用
 99mTc-Phytate:(粒子径:200〜1,000nm)
  テクネ・フチン酸キット(第一ラジオアイソトープ)
肝脾シンチグラムによる肝脾疾患の診断用
 99mTc-Tin colloid:(粒子径:400〜5,000nm)
  スズコロイドTc-99m注調整用キット(日本メジフィジックス)
肝脾シンチグラムによる肝脾疾患の診断用
■SLNBの普及度について
 2007年2月現在、わが国では、SLNBは保険適用にはなっていません。同様に、その目的で使用されるRI、色素等の薬剤も保険適用として承認されたものはありません。したがって、多くの施設が研究費等で薬剤(表1、2)を購入し、その使用にあたっては日本核医学会のガイドライン2)に準拠し、施設内倫理委員会の承認を得て行っているのが実状です。
 2003年の日本乳癌学会のアンケート調査では、22,620例の乳癌手術を受けた患者さんのうち4,427例、19.6%の患者さんがSLNBを受けていました3)。また、回答のあった309施設のうち、127施設、41%の施設でSLNBが施行されていました。RIを使いにくいという施設の事情から色素法単独で行われている施設が多いようです(図2)。
 SLNBについては、熟練した乳腺外科専門医を中心とした集学的乳癌診療チームによる適切な施行、対応が肝要と考えられます。
図2 2003年におけるセンチネルリンパ節生検の採用法3)
図2
■SLNの転移診断
 SLNBを行い、腋窩リンパ節郭清を省略する際には、正確な転移診断が必要となります。また、SLNは最も転移しやすいリンパ節であることから詳細な検査の施行により小さな転移が見つかり、より正確な進行度診断ができることも期待されます。
 現在、転移診断は、組織診、細胞診、さらにRT-PCRなどの分子生物学的診断法が試みられています。組織診において、切片数を増やしたり(多数切片の作製)、抗サイトケラチン抗体などを用いた免疫組織染色を併用すると、微小転移の発見が増え、リンパ節転移陽性率が上がることが報告されています。また、最近では、分子生物学的手法をさらに発展させて、検査測定機器による手術中のリンパ節転移診断も検討されてきています。血液検査のようにリンパ節を機械に入れるだけで転移診断ができる日が来るのはそう遠くないかもしれません。
 参考文献
1) Lyman GH et al:American Society of Clinical Oncology Guideline Recommendations for Sentinel Lymph Node Biopsy in Early-Stage Breast Cancer. J Clin Oncol 23(30):7703-7720, 2005
2) 日本核医学会:センチネルリンパ節の核医学的検出法ガイドライン.
核医学 36:1033-1034,1999
3) The Japanese Breast Cancer Society:Results of Questionnaires Concerning Breast Cancer Surgery in Japan 1980-2003. Breast Cancer 12(1):1-2, 2005
 
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